デジタルシネマとは

デジタルシネマとは、デジタル方式で撮影し、上映する映画のことです。従来、映画はフィルムに撮影し、映画館でフィルムを回して上映していましたが、デジタルシネマでは、フィルムを使いません。

かわりに、HDD(ハードディスク)などにデジタルデータとして撮影・保存し、配給や上映もデジタル映写機で行います。映画製作や上映にかかるコストを軽減でき、映像の編集・加工が簡単だというメリットがあります。

デジタルシネマの方法

デジタルシネマでは、高精細画像(HD:High Definition)対応のデジタルビデオカメラで撮影し、それをデジタルデータ化してコンピューターのハードディスクに蓄えます。

デジタルプロジェクターで映し出す

その後、「ノンリニア編集機」と呼ばれるデジタルデータ用の編集機で編集して、最後に通信回線経由でデジタルデータのまま各地の映画館に送ります。そこでデジタルプロジェクターを使ってスクリーンに映画を映し出します。

脱フィルム

デジタルシネマは、光学フィルムで撮影してそれを現像し、フィルムを切り張りして編集し、完成品を何本も焼き増して映画館へ送り、映写機でスクリーンに上映するという過程をすべてデジタルデータに置き換える取り組みです。

画質の差が解消へ

デジタルビデオカメラによる映画撮影は、フィルムによる撮影に比べて大画面に映したときに画質が著しく落ちるとされ、これまで積極的に取り組もうとする動きはありませんでした。しかし、技術の進歩により、ビデオカメラとフィルムの画質の差が解消されました。

ルーカス監督が主導する映画のデジタル化は、どのように進んでいるのでしょうか。日本の最前線の動きを見てみましょう。

デジタルカメラ VCR

デジタルカメラのメカニズムの中でDigital VCR(Video Cassette Recorder)、特にヘリカルスキャンのテクノロジーの発達が著しいです。

VCRの原理

VCRの基礎原理は、電気信号を磁気テープに記録するという意味でオーディオのテープレコーダーと同一です。

ビデオ信号

しかし、ビデオ信号は、オーディオの数百倍という周波数と広帯域を持っています。

ビデオ信号の高い周波数に対応するためにはテープの走行スピードを速めればよいことになりますが、それではテープの物理量(1時間のテープが数秒で終わり、テープの分量が膨大になる)に問題が生じてしまいます。

テープはドラムの周囲を回転しながら映像を記録

そこで、テープの走行時間を変えずにドラムを高速回転し、テープはドラムの周囲を回転しながら映像を記録するメカニズムにしたのです。

ソニー製HDデジタルビデオカメラ「HDCAM24P」

ソニー製HDデジタルビデオカメラ「HDCAM24P」は、ジョージ・ルーカス監督が「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」の撮影で使いました。「1080/24P」という撮影規格に基づいたHDデジタルビデオカメラです。この機種の登場が、映画制作のデジタル化への追い風になりました。

1080/24Pとは

「1080」とは、画面に現れる有効走査線の数のこと。普段、私たちが見ているNTSC方式のテレビ画面(走査線480本)の約2倍、フィルム並みに美しいと言われるハイビジョン(同1080本)と同等のきめ細かい画像を撮影することができます。

1秒間に24枚の画像

「24」とは、1秒間の画面を構成する画像の枚数を示します。NTSC方式のテレビ画面は1秒間に30枚、光学フィルムを使う映画は1秒間に24枚の画像で表現されます。1080/24Pは、ビデオカメラであっても映画と同様の感覚で撮影ができるように配慮した規格なのです。

プログレッシブ

「P」とは、プログレッシブ(順次走査)を意味します。通常のテレビ放送は、有効走査線を1本おきに走査していくインターレース(飛び越し走査)と呼ばれる方式で放送されています。

インターレースより画質が向上

これに対し、プログレッシブはパソコンの画面と同じく、有効走査線を上から下まで順番に走査していきます。このため画面のちらつきも少なく、同じ有効走査線ならインターレース方式に比べて画質が格段に向上します。

つまり、1080/24Pは、フィルムに近い画質を実現した画期的なビデオカメラなのです。

ライトが少なくて済む

デジタルカメラでは、フィルム撮影より便利になる点もあります。最大の利点は、撮影に必要なライトが少なくて済むことです。

10分の1ほどの光量で撮影できる

フィルムの場合、撮影時には被写体にかなりの量の光を当てる必要があり、十数個ものライトを使います。これに対し、HD対応ビデオカメラは、その10分の1ほどの光量で撮影ができてしまいます。

カメラマンとスタッフの2人だけ

少量の光でも撮れるHD対応ビデオカメラの強みは、特に野外で遺憾なく発揮されます。ある害の制作では雨がしたたり落ちる繁華街の雑踏を撮影しましたが、カメラマンとカメラマンに傘をさしかけるスタッフの2人だけで無事、撮影できました。フィルムで撮るとなるとライトを多数用意しなくてはならず、人もカネも時間もかかっていたところです。

HDシステム

High-definitioni image capture

HD、つまりハイディフィニションシステムは、1981年のSMPTEの展示デモンストレーションを皮切りに、主にアメリカと日本を中心に発展してきたフォーマットです。

60i

HDは60Hzでインターレスし録画されるシステムで、その方式を略して60iと呼ばれています。

NTSC方式の525本に対して約2倍の1,125本

走査線の数はNTSC方式の525本に対して約2倍の1,125本となり、文字通りHigh Difinition(高解像度)を持っています。しかしHDシステムは世界統一規格になってはいません。ヨーロッパではEC統一のHD-MAC規格で走査線は1,250本になっています。

24f/sのフィルム素材からビデオ信号への変換

現状の問題点として、24f/sのフィルム素材からビデオ信号に変換する際は、本来、60Hzには30f/sで対応するべきところ、2枚のフィルム画像を5フィールド分の画像に変換せざるを得なくなってしまいます。換言すれば24f/sに対して60Hzでは2-3プルダウンを経て60iに変換しなくてはならないのです。

解像力や画面上のフリッカーも進歩

従って、インターレスでは静止画は問題ありませんが、カメラや被写体が動くとき解像力が低下し、動きのスムーズさに欠けるという現象が起きる可能性があります。

1/60f/s

しかし、現在は、インターレスだけでなく、高周波数を用いるプログレッシブシステムも可能でNTSC方式でも525本の走査線を1/60f/sで一気に操作するので解像力や画面上のフリッカーも著しく進歩したのです。

NTSC、PAL、SECAM

HDはNTSC、PAL、SECAMとシステムによって統一見解は出ていないものの、その走査線数、画素数、フレームのアスペクトレシオ(画面比)を改善し、映像のクオリティーはブラウン管のみならず、大型画面のディスプレイにまで適応しつつあります。

ENGとは

ENG-Electronic News Gatheringの略称。ビデオカメラによるニュース取材システム。EFPとはしばしば区別されます。ビデオワークの即時性を生かした報道のシステムです。

映画の発展史(年表)

世界と日本の映画技術史
1899年 吉沢商店が国産の映写機を発売する
1903年 着色方式によるカラー映画、パテカラー作品、東京で公開
1906年 東京・真砂座で染色機応用極彩色活動写真(パテ―カラー)『ドン・キホーテ』その他を上映
1907年 大阪で最初の映画館が発足
1908年 吉沢商店、東京目黒行人坂に日本で最初の撮影所を建設、劇映画の作成を本格化
1912年 日本活動写真株式会社(略称:日活)、既成四社の合併による日本で最初の大手映画会社として発足
1913年 日活向島撮影所建設
1914年 小林喜三郎ら、天然色活動写真株式会社(通称:天活)を創立
1929年 イギリスでアンソニー・アスキス(1902-68)が傑作『ダートムアのコテージ』を、
いまにも消えなんとするサイレントで制作する。
1930年 ヴワディスワフ・スタレーヴィチ(1882-1965)による「狐のルナール」(狐物語)が
ストップモーションの技術を成功させた好例となった。
1949年 富士フィルム、映画用35ミリ・カラーフィルム、フジカラー発売
1954年 国産8ミリ・カメラ、シネマックス8A発売。2万2500円
8ミリ映写機が発売される
1957年 国産8ミリ・カラー・フィルム富士ASA10発売、現像こみ、1750円
1967年 日本ビクター、VTRを開発
1969年 ソニー、VTRを開発
松下電器、VTRを開発
1971年 大映破産
1977年 8ミリ・カメラの生産ピークに達する、161万台
1984年 NHK衛星テレビ放送開始
1989年 ソニー、アメリカの大手映画会社コロンビアを46億ドルで買収
NHKが衛星放送を開始
1990年 松下電器、アメリカのMCAを61億ドルで買収
1993年 にっかつ倒産。1912年創立の世界で最も長い歴史を持つメジャー映画会社のひとつがこれで歩みを止めた

出典:
日本映画史4(岩波書店)
世界シネマ大事典(三省堂)